抽象画の特徴や種類は?代表作や楽しむコツも合わせて解説
抽象画は具体的なモチーフを描くのではなく、色彩や形、構図を通じて感情や観念を表現する芸術です。一口に抽象画といっても、その種類やスタイルは非常に多様です。この記事では、抽象画の特徴や種類について解説します。代表作や楽しむコツも合わせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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抽象画とは
抽象画とは、具体的な対象を描写せず、色・線・形などの要素を用いて表現された絵画作品です。現実に存在する人や風景を描く「具象画」とは異なり、目に見えない感情や観念、画家独自の世界観を表現することを特徴としています。幾何学的な構成や、一見すると子どもが描いたような自由なタッチの作品が多く、そのために難解なイメージをもたれることが多いです。
しかし、抽象画は線や色彩、形の美しさや構成そのものに焦点を当てた作品であり、純粋な絵画の美しさを追求することがその本質にあります。
抽象画の種類
抽象画の種類は、以下の5つです。
- キュビズム
- 純粋抽象絵画
- 新造形主義
- アクション・ペインティング
- カラーフィールド
キュビズム
キュビズムは20世紀初頭にピカソやブラックが生み出した抽象画の手法で、物体を幾何学的な形に分解し、多面的に描くのが特徴です。具体的なモチーフを抽象的に変化させることで、従来の視点とは異なる新しい見方を表現しています。
有名な作品として、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」があります。角ばった線によって描かれた身体や、歪んだ顔など、従来の写実的な描写とは全く異なる描写は、人々に大きな影響を与えました。
純粋抽象絵画
純粋抽象絵画は、形や色だけを用いて構成された抽象画です。対象物を一切描かず、感情や観念を純粋な視覚的要素で表現します。カンディンスキーは純粋抽象絵画を代表する画家で、幾何学的な線や色面で構成される作品が多いのが特徴です。
新造形主義
新造形主義は、モンドリアンを中心に発展した抽象画の形態です。赤・青・黄の三原色や白黒を使用し、水平線と垂直線を基調とした構成が特徴的です。1917年に創刊された芸術雑誌「デ・ステイル」で初めて提唱されました。徹底的に無駄を削ぎ落した構成となっており、様々な抽象的表現を幾何学的に実現しようとする理論です。
アクション・ペインティング
アクション・ペインティングは、制作プロセス自体を作品の一部とみなすスタイルで、代表的な画家は、ジャクソン・ポロックです。絵の具をキャンバスに直接流し込んだり、飛び散らせたりして描かれる作品は、画家の身体的な動きがそのまま反映されています。力強いエネルギーを感じさせる表現が魅力です。
カラーフィールド
カラーフィールドは、キャンバスを平面的に塗りつぶして制作する技法のことです。マーク・ロスコやバーネット・ニューマンが代表的な画家で、色そのものが感情を伝える重要な要素となっています。モチーフを盛り込むことはせず、鮮やかな色を使用して大きな「面」を塗り込みます。
抽象画の代表作
抽象画には、様々な作品があります。ここでは、その中でも代表的な作品を6つ紹介します。
- コンポジションVIII
- 黒い正方形
- セネシオ
- ハーレクインのカーニバル
- ニューヨークシティ
- Delta Theta
コンポジションVIII
ワシリー・カンディンスキーによる1923年の作品「コンポジションVIII」は、幾何学的な形と鮮やかな色彩が特徴の抽象画です。丸・三角・線が複雑に絡み合いながらも調和を保ち、リズミカルな雰囲気を味わえます。カンディンスキーは抽象絵画の先駆者とされ「コンポジションVIII」はその集大成ともいえる一枚です。
黒い正方形
カジミール・マレーヴィチによる1915年の作品「黒い正方形」は、シュプレマティズムの象徴的な作品です。単純な黒い正方形がキャンバスに描かれたこの作品は、当時の芸術界に大きな衝撃を与えました。形や色を極限まで削ぎ落とし「何もない色」を表現しています。
セネシオ
ポール・クレーによる1922年の作品「セネシオ」は、人の顔を幾何学的な形と鮮やかな色彩で抽象化した作品です。老人の頭部をモチーフに描かれています。クレー特有の軽やかさと詩的な要素が詰まった名作であり、人気の高い作品です。
ハーレクインのカーニバル
ジョアン・ミロによる1925年の作品「ハーレクインのカーニバル」は、シュルレアリスムの影響を受けた抽象画の代表作です。カラフルな形や生き物が画面全体に広がり、自由で遊び心あふれる雰囲気を作り出しています。ハーレクインとは、道化師のことです。絵画の中心近くにある赤と青の丸い顔は、ハーレクインを表しています。
ニューヨークシティ
ピエト・モンドリアンによる1941年の作品「ニューヨークシティ」は、赤・青・黄の三原色を用いてニューヨークのストリートを表現しています。幾何学的な形態とシンプルな色彩が特徴で、都会のエネルギーや活気を鮮やかに描き出した作品です。
Delta Theta
モーリス・ルイスによる1961年の作品「Delta Theta」は、ステニングと呼ばれる技法を用いて制作されています。絵筆を使用せず、大きなキャンバスに絵の具を染み込ませる技法ですが、制作過程が厳重に秘匿されていたため、現在でも具体的な方法は謎のままです。
「Delta Theta」では、キャンバスの下部両端に色を集中的に配置し、中央部分をあえて未処理のまま残しています。この独特な構図により、絵画空間への新たな視点を提示した代表的な作品とされています。
抽象画を楽しむコツ
抽象画を楽しむコツは、以下の4つです。
- 色彩やビジュアルを楽しむ
- 自分なりにイメージを広げてみる
- 作品の背景を知る
- 画家のことを調べる
色彩やビジュアルを楽しむ
抽象画の魅力は、形よりも色彩や構図、テクスチャに注目することで引き立ちます。鮮やかな色使いや、柔らかい線の流れをじっくり観察し、ビジュアルから受ける感情や印象を楽しむことが大切です。例えば、アクションペインティングからは、情熱や躍動感などを感じることもあるでしょう。また、カラーフィールドからは、純粋な色そのものの良さを味わえます。感覚的に楽しむことが、抽象画の第一歩です。
自分なりにイメージを広げてみる
抽象画は、見た人が自由な解釈を楽しめます。形や色の組み合わせを見ながら、自分なりのストーリーやイメージを膨らませてみてください。見た人それぞれが違ったイメージをもつことも、抽象画の面白いところです。固定概念にとらわれず、自分の感じ方を大切にしましょう。
作品の背景を知る
抽象画が生まれた背景や時代の文脈を知ることで、作品に対する理解が深まります。例えば、画家がその作品を通じて伝えたかった感情やメッセージ、時代背景や社会的な要素を調べると、新たな視点が得られるでしょう。インターネットや文献、美術館の説明文など、様々な場所で作品の背景を調べられるため、ぜひ探してみてください。
画家のことを調べる
抽象画を描いた画家の生涯や制作スタイルを知ることも、作品を楽しむポイントです。画家がどのような思想や経験を持ち、作品に何を込めたのかを学ぶと、抽象画への理解が深まるため、より親しみをもてるようになるでしょう。
抽象画の特徴を知って自分なりの方法で楽しもう!
抽象画には、キュビズムやカラーフィールドなど多彩な種類があります。それぞれが異なる背景や思想から生まれており、独自の美しさを楽しめます。自由な発想で構図を見たり、イメージを膨らませたりしながら、自分らしい楽しみ方を見つけてみてください。