美術館に寄贈・寄託するメリットとは?美術品を社会貢献に役立てよう
美術館への寄贈・寄託は美術品を後世へ伝えられる手段の1つです。寄贈と寄託のどちらであっても同様に美術館で展示されていますが、所有権を誰が有しているのかによって、それぞれ呼び方やメリットが変わります。
自宅で眠っているコレクションをどのように取り扱えば良いのか悩んでいる方向けに、寄贈・寄託の違いやメリット、美術館に寄贈・寄託をする方法を解説します。
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寄贈と寄託の違いとは?
寄贈と寄託は、美術品の所有権を所有者が持っているか、美術館が持っているかどうかの違いです。
自宅でコレクションしている美術品を社会貢献へ繋げたいと考えている人は、寄贈と寄託のどちらにしようか迷ってしまうでしょう。寄贈と寄託の違いについてそれぞれ解説します。
寄贈は所有権が移転する
寄贈とは、所有者が美術品と所有権を美術館へ贈ることです。所有者は美術品への所有権を放棄するため、権利も同時になくなり、美術館は美術品の所有権を得られます。
所有者から美術館へ所有権を移動し、寄贈された美術品は「収蔵品」と言います。
寄託は所有権が移転しない
寄託とは、所有権を所有者から移さずに、美術館で美術品の保管や展示を行うことです。美術館は所有者から美術品を借りている状態となります。美術品の所有権の移動がないため、美術館などで保管・展示されていても権利は所有者のまま変わりません。
所有者が所有権を持ったまま美術館へ寄託された美術品は「寄託品」と言います。
寄贈と寄託のメリットとは?
美術館にコレクションを寄贈あるいは寄託することで、所有者と美術館それぞれにどのようなメリットがあるのか解説します。
寄贈・寄託共通のメリット
寄贈・寄託は所有権を誰が持っているのかが大きな違いですが、共通のメリットもあります。
人は美術品を鑑賞することで感性が刺激されたり、心が動かされたり、多くの良い影響を受けられます。自宅のコレクションを寄贈・寄託することで、多くの人の目に止まり、社会貢献に大きく役立つでしょう。
美術館の寄贈・寄託共通のメリット
美術館は寄贈・寄託を受けることで美術品の研究や調査ができ、美術品の価値を世の中に広められるメリットがあります。
美術館は美術品を収集し保管して、調査研究を行ったり展示をしたりする施設です。美術品の学術的・専門的な研究や調査を行い、美術品を公開することによって、美術品の価値を多くの人へ知らせる役割があります。
寄贈・寄託する共通のメリット
所有者は美術館へ寄贈・寄託することで、コレクションの管理をしてもらえることがメリットです。
美術品はジャンルによってそれぞれ温度や湿度などの最適な環境条件が変わります。美術品を寄贈・寄託することで、美術館が美術品のそれぞれのジャンルに合わせて適切に管理・保護します。美術品を個人が適切に管理するのは難しいため、プロに管理してもらうことでコレクションの劣化を防ぐことが可能です。
所有者は寄贈後、美術品が展示されることで広く一般の人に知らせることや教育活動に活用できることに加え、社会貢献に繋がります。展示された美術品には、寄贈者・寄託者の名前が明記されるため、社会貢献活動を世間にアピールでき、名声を得られるでしょう。
自宅のコレクションの歴史的背景や価値が寄贈・寄託による調査で判明することもあります。自宅で眠っているコレクションを、後世まで適切な管理の下で残せることがメリットです。
寄贈のメリット
コレクションの寄贈によって美術館と所有者が得られるメリットを解説します。
美術館の寄贈のメリット
美術館は寄贈してもらうことによって、無償で美術品を譲渡してもらえます。美術館は所有権を持つため、美術品の自由な使用や展示・販売できるところがメリットです。
美術品の所有権を持つことができるため、最大限に美術品を活用できます。美術品を永久的に適切に保管・展示することで、美術品をこれからの将来の人々に観てもらえます。また、歴史的背景や価値を知らせることによって、教育的・社会的に貢献することが可能です。
寄贈するメリット
公的機関へ寄贈する場合、日本では購入時の所得価格が所得控除される税制の優遇が受けられるメリットがあります。しかし、控除額には限度があり、高額な美術品の税制上の優遇制度は受けられず、海外に比べると大きなメリットにはなりません。
税制上の優遇制度は、「特定寄附金の額の合計額(総所得の40%相当額が限度)ー2,000円=寄附金控除額」の算式で計算します。控除を受けるためには、税務署に確定申告書の提出が必要のため、領収書は大切に保管するようにしましょう。
寄託のメリット
コレクションの寄託によって美術館と所有者が得られるメリットを解説します。
美術館の寄託のメリット
美術品の所有権を所有者が持ったままであっても、調査研究を行ったり展示したりできるメリットがあります。
所有者がコレクションを寄贈したくないといった場合でも、寄託という仕組みがあることで美術品の収集がしやすくなり、より多くの美術品の調査や研究・展示が可能です。
寄託するメリット
所有者はコレクションの管理を美術館が行ってくれるメリットがあります。紫外線や湿気などが美術品の劣化に繋がってしまうことがあり、一般的な家庭では、防カビや防虫・温度・湿度など適切な管理を行うことは難しいです。
加えて火災や地震などの災害や、破損・消失・盗難のリスクが減り、美術品を守ることができます。
寄託をする場合には寄託契約を結びます。コレクションを寄託する期間や展示の条件・販売する条件などを決めることができ、寄託の期間中は安心して美術館へコレクションを預けることが可能です。寄託期間が終了した場合には、所有者へ返却されます。
適切な管理がされているため、返却後のコレクションの劣化が最小限に留められることが所有者のメリットです。
美術品を寄贈・寄託する方法とは?
自宅のコレクションを寄贈・寄託する方法を解説します。
寄贈・寄託の要件に該当するか確認する
寄贈・寄託の要件に自宅のコレクションが該当するかを確認してみましょう。美術品の保管には適切な管理が必要なため、お金がかかります。そのため、美術館は美術品の寄贈や寄託の全てを受け入れているわけではありません。
美術館によっても決めている要件が変わるため、自宅のコレクションが要件に該当するかどうか、美術館へ事前に確認しておくのがおすすめです。
寄贈と寄託のどちらか決定する
寄贈と寄託は所有権を移動するかどうかが大きな違いです。それぞれメリットがあるため、自宅のコレクションはどちらが適切かを判断し、決定しましょう。
美術館によっては寄贈・寄託どちらかのみの受け入れの場合があるため、併せてホームページや窓口などで確認しておく必要があります。
美術館へ寄贈・寄託の依頼をする
要件や寄贈・寄託のどちらにするかを決定したら、美術館へ依頼しましょう。美術館のホームページに問い合わせ先の記載があるため、電話・FAX・郵送など、指定された問い合わせ方法で依頼を行います。
美術品を寄贈・寄託して大切な美術品を後世に残しましょう
美術品は過去を後世に伝える大切な文化財です。美術館などへの寄贈・寄託は美術品の研究によって、歴史的・文化的に新たな事実が判明するかもしれません。
美術品は観る人の心を動かしたり、興味を引き出したりするきっかけになります。大切なコレクションを美術館などに寄贈・寄託することによって広く一般の人に知らせ、後世に残しましょう。